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大統領、就任!(103)
2007 / 09 / 30 ( Sun )
ひかるがVTR問題で仮眠の連続、死闘を繰り広げていた頃、家計は火の車であった。
食事はほとんど外食、疲れるので、たまには、ビジネスホテルに泊まる事もある。
すべてが、会社の伝票で落とせる訳ではなく、小遣いが足りなくなると、女房が、爪に火を灯して蓄えたお金を、むしり盗るように持って行く。
団地の奥様族は、週に1、2度しか帰ってこなひかるを見、
「あの男、顔に似合わず、やるわね!」
「間違いなく女がいるのよ!」、と井戸端会議だ。
当然、女房の耳にもそれは、届いてしまった。
そして、二人の子供を抱え、貯金は底をついていたのである。
疲れ果てて帰って来たひかるの顔を見ると、女房は爆発した。
「母子家庭なら、覚悟のしようもある!」
「しかし、もうこの貧乏生活、我慢出来ない!!」
と、テーブルをひっくり返し、怒鳴り付けたのである。
角が出る、なんてものではない。
針千本、いや、角千本だ!
さんまもびっくり、前歯をとんがらし、今にも噛み付かんばかり、恐ろしい形相だ。
次から次、出てくる言葉は、ひかるの脳に、あらゆる角度からブス、ブスと突き刺さる。
「もう、あんたの顔を見るのも嫌だ!」
「もう、これ以上の貧乏は、嫌だ!」
「出て行け!」
「あんたなんぞ、地球の裏にあるという、貧乏王国へ行けばいい!」
「即、大統領、間違いなし!」と、
がなるだけがなって、まだ足りないのか、周りにあるものすべて叩き割り、子供を連れて実家へ帰って行ってしまった。
ひかるは、なすすべもなく、一人酒を飲むしかなかった。
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カセット化(102)
2007 / 09 / 30 ( Sun )
当時、可搬型VTRとして、あのNASAが、軍事偵察用に開発したと言われる、VR3000なる機種が、国内では4,5台導入されていた。
どういう訳か、その機種が、ひかるの会社にあった。
設立時、TBSとフジテレビが、別々に確保するよりは、資本折半した子会社に持たせ、両局で使用出来る、という事で、導入されたらしい。
当時は、カラーテレビが飛ぶように売れ、家電メーカーは、フィルムCMから、色再現の良い、VCM作りに軸足を移しており、このVR3000が威力を発揮していたのである。
オペレーター付で、日だて15万円でも、飛ぶように注文があった。
ひかるは売れれば売れる程、早く可搬型国産機開発の必要性、反米感情が日に日に増していった。
当然、ソニーも可搬型、H-500機種を開発しており、フィールドテスト中だが、どうにも訳の分からない回転ムラエラーが出る。チェックをするとOKで、エラーの原因が、全く掴めないのだ。
事故日報をピックアップし、気になる事があったので部下にその日の天候を調べさせた。
やはり雨が降っており、それが原因だが、室内での使用で、なぜ?
その事をソニーへ連絡、しばらくして、原因解明OKの連絡。
湿気でテープの貼り付け現象が出ているとの事。
こんな微妙な事でエラーが出ていたのだ。
さすがソニーで、世界中の支店へ打電、湿度の一番高いのはボルネオとの事。
それ以上の湿度でも稼動するよう設計変更。H-500は全世界へ輸出されていったのである。
VR3000と並べて使うと、桁違いの性能。これでアメリカ製VTRを駆逐出来た、と。
VTRは平坦な所で、そっと置いて使う精密機械、しかしひかるはトラックの荷台で紐で結え付け移動使用、どんな地震でも稼動する事を求めたのである。
ひかるが立ちはだかったゆえに、オメガ方式へ切り替える事が出来た。
もし、出来なかったらと考えると、オートスレーディング、カセット化は難しく、途中から方式変更、と言う事態になれば、莫大な費用が掛り、番組内容にも影響したであろう。
そして、一番大事な事は、日本のVTRが全世界で認められた事だ。
南端の小さな島で、ランプの灯りで育った少年の目、どこかで垣間見たカセット、いずれ放送現場でも使われるだろう、と10年先を夢に描いたのである。
当時、局の予算執行担当者は年配者で、あの子供のオモチャであるカセット化を局設備に当てはめる事は、100%出来なかったのである。
06:37:35 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
クビ!?(101)
2007 / 09 / 30 ( Sun )
今なら書ける。
ソニーと方式問題で画策している時、フジテレビのお偉さん、予算執行、発注出来る立場にある人から呼び出しを食らった。
「君は、親会社、キー局にタテついて、あらぬ動きをしているようだけど、やめろ!
親会社から、一言いけば、君のクビなんぞ、すぐ飛ぶぞ!」
と、脅しというよりは、脅迫だ。
ひかるは、承知しましたと、そこを出ると、すぐさま「開発を急ぐべし!」とソニーへ電話したのである。
夜は一人でいつもと違う焼き鳥へ行き、じっくり考えた。
業界全体を考えるべき立場の人が、自分のメンツばかり考えやがって、なんてケツの穴のちっちゃい奴だろうと、情けなくなった。
「俺の首を、袈裟掛け、みじん切りにしたとて、一文の得にもならない、やるんならやって見ろ!」と怒りが込み上げて来た。
ひかるは、今まで以上に、意地でもなんとかしてやろう、と固く誓ったのである。
06:37:09 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
東宝と握手(100)
2007 / 09 / 29 ( Sat )
そしてVTRを再生に2台、収録1台のA、Bロールによる編集システムを突貫工事で作り上げたのである。
ひかるは当時、100人の部下を抱え、ドラマや音楽番組、スポーツやバラエティー、海外ロケから水中撮影、カメラや音響、照明などのスッタフ手配、番組内容把握、目の回る忙しさだが、それと並行して、編集システムの開発だ。
連日連夜、仮眠状態である。
そして編集システムが完成した頃、東宝から連絡があり、昼のメロドラマを日本製1インチVTRで制作し、放送しようとの話が持ち込まれた。
東宝、フジテレビ、ひかるによる、ひかるプロジェクトが始動したのである。
もちろん、バックには、ソニーとひかるの連係プレーがしっかり出来ている。
世界初、1インチ編集システム、1インチVTR帯ドラマの放送が実現したのである。
その間、ひかるの行動は、死闘の二乗と言えるだろう。
昭和54年、1月から放送された、昼メロVTR帯ドラマは、業界に衝撃を与えた。
この昼メロが放送されている頃、ソニーから電話、キー局がオメガ方式の採用を決定、大量の発注があったと、歓喜の連絡が来た。
以後、あっと言う間にオメガ方式に切り替っていったのである。
それどころか、ソニーは、海外でもその1インチを売りまくり、世界中でこのオメガ方式が、統一方式となったのである。
編集システムを担当させた、ひかるの部下K君は、三越とフジテレビが折半出資、アルタスタジオを立ち上げるとの事で、そこへ移籍させた。今も元気で頑張っているようである。
また、K君は、昼メロのヒロインと結婚。
ひかるは、上司として、大勢の前で主賓挨拶。
しどろもどろで、汗をかき、恥をかいて、大人になっていったのである。
10:32:34 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
ソニーと握手(99)
2007 / 09 / 29 ( Sat )
オメガ方式は読んで字の如く、テープがヘッドを1回転していない。
勿論、左右のリールに段差、奥行きをつける必要もなく、平坦に出来る。
しかし、30分テープがかかるからとて、1時間2時間のテープをかけ、早巻き戻しをし、30ぶんの1秒、フレーム単位で、ぴたり止めるのは、どうしてもうまくいかない。
それには、開発の時間がかかると言う事だ。
ひかるはまず、オメガ方式を開発している、ソニーの厚木工場へ飛んだ。
町工場のようなバラック立て、VTRが10台くらい並び、学生かと思われるような卒業したての若手、4、5人の開発者がいた。
「放送業界は今、アルファ方式に傾いているが、それでは絶対駄目だ。その内、アメリカが、それに勝るVTRを投入、日本はまた、アメリカに利益を吸い上げられ続ける。だから、どうしてもこのオメガ方式でなければ駄目だ。もし不採用になっても、今後も、開発をずっと続けて欲しい。願わくば、これから急いで開発を早め、何とか逆転させる方法を考えよう」と、熱く説いたのである。
とにかく、ソニーサイドは、本体の開発に全力を挙げて欲しい。ひかる側で、フィールド実験は引き受ける。勿論データも上げる、とお互い協力体制を作り上げたのである。
早速ひかるは、タイムコードを使った編集システムの開発とフィールド実験に取り組む。
フイルムは1コマ単位に横に穴が開いている。爪で、1秒間に30枚掻き落とせば、映画になり、テレビでも放送出来る。
しかしVTRには、穴を開けるわけにはいかない。ワンフレ単位に所番地に当たる数値を入れ、それで制御し、30分の1秒単位で、狂いのないようなコントロールをしなければならないのだ。
当時はまだ、コンピュータすらなく、自作するしかない。
ラックを買い込み、基盤を差し込み、組み上げていくのである。その内、虫(バグ)がうようよ、幽霊の如く現れ、消えていく。いらいら頭に来、叩き割りたくなったが、スタートさせた以上、逃げる訳にはいかない。
また、ハードディスクがあるわけじゃない、2センチくらいの紙テープに穴を開け、それでデータを記憶させる、パンチ式記憶方式だ。
また、VTRを高速巻き戻しをした場合、フレーム単位でピタリと止める。これも至難の業であった。
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